ARTICLE

一流と俺流

全日程終了しました。最終日も超楽しかった。
正直もう少し続けていたいくらい。

先週日曜に書くはずのイギリス回が
発症してしまってすっ飛んだので、
終わったばかりのイタリアからやります。

とはいってもほぼほぼ送りなので、
パトロールで検挙した分しかないですが。

少ない時間でしたが全体振り返ってみて
コロナ前、2年半くらい前か、と比べると、
例えばCPとかストーンあたりはやっぱり
買いづらくなった気がします。

ここ2,3年でブランド努力もあって知名度、
需要が爆上がりした一方で、移り気な
ハイプさん達が抜けて差し引きゼロかな、
てな目論見はやはり甘かった模様。

一人のトレーダーさんが話してたのは、
あれもこれもいろいろ買ってくれた人に
売るモノであって、単体では売らんとか。

もう一人は、同系統のスポーツウェアと
抱き合わせで売るから、そこからCPや
ストーンだけピックするのはダメだとか。
ストックコントロールが徹底してる。
それだけディーラーさん達にとっても
大切な商材なんです。

それでも前からお世話になっている
トレーダーさんから多少手に入れることは
できたのですが、値段は上がりました。
メインはセーター、あとパンツ、
上着はほとんど出てきませんでした。
まあそうバランス良く揃わないのが
現地仕入れのリアル。
このタイミングで出てきたこと、
売ってくれたことに感謝して大切に
取り扱うスタンスは変えずにいきます。

それに僕が好きなイタリアは幸いにも
CP、ストーン以外にたくさんあるので、
4日間の大きなタイムロスはあったものの
自己満足度の高い内容は作れました。

Valstar。

あれはまだ渋谷にいた頃でした。
未だ覚えている人も1人はいるかも。

今までのイタリア仕入れの中で、
ショッキングな発見トップ5を挙げるなら
必ず入るあの時のValstar。

似たようなレザーがずらっと並んでるレールを
シャシャシャ!と高速で流している中で、
視覚じゃなく触覚で手が止まった体験。
今調べたら16年の4月8日でした。
ぞわっとしたな、あの瞬間。本当に。
で、今回数年ぶりに再会。

イタリアしばらく来てなかったけど、
お店の傾向を直近1年で切り取ったら、
イタリアでこいつに戻ってくるのは
当たり前っちゃ当たり前の流れですね。

しかもヤケまくってる。
今の気分にもカチッとハマった。

Valstarはこれ1着だけですが、
同系のレザーは10枚ほど買いました。
イギリス組とどう仲良くするか楽しみ。

レザーの基本てブラックの表革っていう
刷り込みが誰しもあると思います。
アメリカはもちろん、イギリスもそう。

でもイタリアは違うんですね。
Camoscio(カモーショ、=シャモア)って
呼ばれる、バックスキンとか、それこそ
最初のValstarはシャモアじゃなかったかな、
のA-1タイプがイタリアンレザーの基本。
さっきのValstarがその代表例。

もちろん古いバイカーやイタリア海軍など
ブラックの表革を使ったものもありますが、
僕が知る限りはかなり限定的です。

でもこれはその代表例ともちょい違う。
ボタンアップじゃなくジップアップだし、
バックスキンじゃなくピッグスキンだし、
ルックスもなんとなくアメリカっぽいです。

イタリア古着の他国と大きく異なる特徴に、
70年代より前の服が極端に少ないという
いまいち信じがたいような事実があります。

70年代より前:70年代以降で比較すると、
ざっくり私見で、0.1 : 99.9くらいの物量比。
1000着見てやっと1着古い、くらい。
いや、もっと少ないな。

だからこんなに古いレザーが出てくると、
未だにびっくりして「古っ!」て声出ます。

50年代かな、それより古いことはあっても
間違いなく60年代ではない。

僕個人的にピッグスキン好きじゃないんです。
今まで革質に感動した体験が単純にないから。
なんかあのドライなタッチもいまいち苦手。
豚肉は大好きだけど、豚革はまず買わない。

でもこのピッグスキンは、自分のイメージの
ピッグスキンからだいぶ外れました。
しっかりしたディアスキン、あほな表現ですが
そんな感じ。こんなしっとりな豚いるんだ。

着た感じもなんか胸板が広く見えるような形。
まあそれは人によるか。とにかくびっくりした。
リブ直して秋口にリリースする予定です。

Allegri。

何人もの著名なデザイナーが務めたって
よく言われるイタリアのブランドです。

僕も詳しくは知らなかったんですが、
'76-'83がアルマーニ、'84-'87がMFジルボー、
'88-'91がロメオジリ、'92-'98がマルジェラ、
だそうです。これは誰だ?マルジェラ?

でもこれはたまたまAllegriだったってだけ、
当たりのオマケみたいなもので、
クラシックベースの赤い服を探してたら
引っかかったのがこれだったんです。

お客さんに借りた1986年のロンドンショップ
ガイド?って雑誌にポールスミスが載ってて、
ショーウィンドーに赤いコートがかかってた。
それがとても印象的で、メンズの赤復活を
願ってたのもあり、それがトリガーになって
探そう、欲しいとなったわけです。

レインコートから始まった、イギリスで
例えるならマッキントッシュに近いのかな、
クラシック&イノベーティブなAllegri。
これも形は前者、ファンクションは後者。
ホテル帰って試着して、少し待って残ったら
自分で着よって思いました。

Ciao。

昔っから静かに追っていて、毎旅1,2着は
買い続けているイタリアのブランド。
ジャンルはスポーツウェアです。

人気があったのは80-90年代とまあまあ古く、
イギリスでもたまに見るので、たぶん当時は
少し海外にも出ていたんだと思います。

トレンドフォロー型のファッションブランド、
だったはずなので、キャラに芯が通ってる感は
あんまりないのですが、なんか手が出ちゃう。

意外とこう端的にうまくまとめる手腕のある
ブランドってイタリアにはそう多くないので、
何気ないけどやっぱりCiaoはいいなあと、
そう思えたシャツでした。

洗ってもスチームかけてもいないせいか、
なんかシュンとした感じにさせて申し訳ない。

パトロール分で一番嬉しかったのがこれ。

イタリアのツイードジャケット。
見た目でわかる違いはあまりないですね。
個人的にも外見10中身90くらいの熱量比。

サルトとかサルトリアって言葉、
聞いたことはあるって人多いと思います。
仕立て屋とかテーラリングって意味です。

これは自前のタグも持たないほど小さなサルトが
そこのお客さんのために総手縫いで仕立てた、
歪なイタリアのビスポークです。

イタリアのスーツに詳しい方なら、
一流のスーツメーカーいくつか挙がるはず。
これはそれらと対極にある服です。

手作り感にあふれたステッチワーク。
技術の高さを品質の物差しにする方にとっちゃ
相手にしてもらえないレベルかもしれません。

ただ、じゃあ縫製技術が超一流の職人さんが
このジャケットを一から作れるのかと言ったら
たぶん作れない。縫製はあくまで山ほどある
作業の一つに過ぎないからです。

全工程を一人で担うからこそ、長けている
部分もあれば足りない部分もある。
各工程に熟練の職人さんたちを抱える一流の
ファクトリーが作る製品に、なかなかこんな
クセを見つけるのは難しい。

同じ製品をまったく同じように何十何百と
生産可能なブランドでは絶対にありえない、
一個人のキャラクターが如実に表れた
こんな服が、僕は大好きです。

一流クラシコの華麗なチームワークと、
俺流サルトの歪なハンドワーク。
どちらを選ぶかは人それぞれですが、
普通なら名前のある、技術も伴っている
良い製品を人は求めると思います。

でも有名とか高級とか、誰かわからない
第三者の価値判断より大切なのは
自分の心が動くかどうか。
服だけじゃなくなんでもそうだと思う。

僕も正直スーツに詳しいかと言われたら
まったく自信はないけど、たった一つだけ
保証できるのはこれが特別だってこと。

だってこんなのが欲しいって言ったところで
理解して探してくれるディーラーさんなんて
ほとんどいないから笑。

着て人前に出ても、誇れるものでは必ずしも
ないかもしれません。
でも一般に評価される仕様にアジャストする
自分ではなく、たとえ他人に認められなくとも
自分らしくいられることを大切にする人、
そんな人やその生活にはきっと馴染んでくれる、
味方になってくれる服だと思っています。

もう一つ俺流サルトのスーツもありますが、
言いたいことは一緒なのでいずれインスタで。

たった5点ですがこれが自分の好きなイタリア、
の一部。興味持ってくれたら最高です。

それではまた日本で会いましょう、チャオ!